最近、テレビや新聞で慢性じん臓病の予防・早期発見を啓発するキャンペーンを見聞きするようになりました。じん臓は心臓や肺、肝臓に比べますと何となく地味な印象の臓器なのですが、身体の中では実に大事な役割を担っています。
じん臓はおしっこを作る臓器である、ということはよく知られています。尿を作ることにより、身体の水分調節や身体にとって不要となった物質の排せつを行うのです。他にも血液中の塩分成分の微調整、血を濃くするホルモンの産生、骨を丈夫にするビタミンDを活性化するなど、その働きは実に多岐にわたります。このような働きを担うじん臓ですが、気をつけなくてはいけないことがあります。その働きが多少悪くなっても、最初の頃はなかなか症状に出にくく、早期発見が遅れることが多いのです。よって、定期的な検査が必要となります。
一般的には検尿と採血でじん臓の働きを観察します。尿中にじん臓からたんぱくが漏れていないか、採血によってじん臓から捨てられるべき血液中の不要物質がたまっていないかどうかをまずは調べます。これらはたいてい健康診断や外来での定期検査の項目に加えられます。そして、もし異常が見つかれば、じん臓の働きを落とした原因を精密検査で調べていくことになるのです。
じん臓が健康な状態を保つには、そこに血液がしっかりと流れていることが大切です。じん臓は血管の集まりのような臓器ですから、血流不足はその働きに大きく影響します。じん臓に血液を送る血管(じん動脈)に動脈硬化や動脈の壁が厚くなる変化が起こったり、まれではありますが、お腹の太い動脈にできたコブ(動脈りゅう)が原因となってじん臓へ行く血液の量が減りますと、とたんに腎ぞうは悲鳴を上げます。よって、じん臓を守る第一条件はじん臓に流れ込む血流を保つことである、といえるでしょう。まず私たちが心がけるべきことは、動脈硬化の進展を予防することです。すなわち、食事や運動といった生活習慣を見直し、血圧やコレステロール、血糖などを適切に管理することなのです。
次に私たちがなすべきこと、それは食事において塩分の摂り過ぎに気をつけるということです。先ほども述べましたが、じん臓は休むことなく血液中の塩分濃度の調整を行っているわけですから、過剰な塩分摂取はじん臓の負担になります。塩分の摂りすぎは「心臓に良くない」と考えられていますが、むしろ「じん臓に良くない」としたほうが良いのかもしれません。他には「下半身を冷やさないこと」、これもよく言われますよね。いずれにせよ、定期的な検査によって、日頃からじん臓のご機嫌をうかがっておくことは大切だと思います。どうでしょう、あなたのじん臓は今、健やかな状態ですか?
( 文責: 則行 英樹 )

