快眠を目指す(その2)

さくらクリニックだより 第六号 令和七年九月発行 

前回の続きです。今回は三橋美穂氏のアドバイスをくわしくご紹介いたします。寝具メーカーの開発部門で研究を行っていた氏の説明は大変説得力があり、私自身大変勉強になりました。さて、良い睡眠を得るための方法を理解するには、あらかじめ良眠の基本ルールを学んでおく必要があります。以下の5つがあります。

ルール①:体内時計を整える
メラトニンというホルモンがあります。これは脳から放出される、眠気を誘うホルモンなのですが、光によってその量が減ることがわかっています。すなわち、明るい日中は血液中のメラトニン量は少ないのですね。朝、太陽光を浴びますと体内のメラトニン量は減少し、起床してから約半日後、外が暗くなり始めた頃に再び分泌の量が増え、この変化が眠気を誘うのです。だから、毎朝同じ時間に起きて陽の光を浴びる、同じ時間に朝ごはんを食べることで、体内時計が整い、からだに一定のリズムが作られるのです。だから休日もいつもと同じ時間に起きることが大切。

ルール②:日中は活動的に過ごして疲れをためる
これは説明を要しませんよね。からだに適度の疲れがたまれば、それだけよく眠ることができます。

ルール③:体温にメリハリをつける
ヒトの体温は一日の中で変化します。日中、活動時に体温は上がり、夜間、寝ている間に体温は下がるのです。そして、入眠する時には約1℃ほど、ぐっと体温は急降下します。この体温急降下のタイミングを上手に作ることが良眠のためのコツといえそうです。そのヒントは入浴方法にあります。実は入眠直前にお風呂に入りますと、温まったからだの温度がなかなか下がらず、寝つきが悪くなることがあるそうです。入浴はお布団に入る2時間前までに済ますのが理想で、ぬるめのお湯に十五分ほどつかると、体温がぐっと下がるタイミングで眠気が出てきてスムーズに入眠できるそうです。

ルール④:寝る前はリラックス
言うまでもなく、からだが落ち着いた状態でいることが入眠の条件です。深呼吸やアロマセラピーなどは緊張をほぐすので効果的。また、お布団の中で羊を数えるのもよいですが、この場合は1から数えるのではなく、カウントダウンのように100から引いていく方法が良いそうです。

ルール⑤:寝室を快適にする
室温(夏は28℃以下で冬は18℃以上)、音(最低でも図書館・昼間の閑静な住宅街レベル)、寝具(からだに合った枕やマットレス)が良い睡眠には必要ですが、ここでは明るさを考えます。外国の方が訪日した際、日本の家屋は照明が明るすぎるとよく指摘されるといいます。前述のように、明るい照明は安眠を妨げます。メラトニンの増加に伴い、夕方以降は少しずつ段階的に照明の明るさを落としていくのはどうでしょうか。これは意外に効果的かもしれません。次回は良眠のための具体的な方法をお示しします。

( 文責: 則行 英樹 )

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